交差点 #4

そんな風に接していたら あの子は まだ少し幼さの残る顔を歪めて
そのまま 家を後にした


胸騒ぎ が した
部屋中をくまなく捜し歩いてみると 台所から果物ナイフが消えていた


その事を理解した途端に 私は家を飛び出していた
唯 闇雲に走りつづけると 交差点の中心に人だかりが出来ていた
脳裏を 消えた果物ナイフが掠めた


人を掻き分けて中心に辿り着くと
そこには 血に塗れたあの子が 知らない女性に抱きしめられていた


いつの間にか 視界が歪んでいた
間に合わなかった
そう感じた途端に 何がなんだか分からなくなった


私はその女性に有難う と言うと
あの子を抱きしめて ひたすら名前を呼びつづけた


途中 微かに お母さん 有難う と聞こえたのは
空耳だったのだろうか


ああ
もう家には帰れないかもしれない
あの人と顔を合わせる事なんで出来やしない


あの子は支えられていた 私が思っていた以上の人に
私は 支えていたのかが分からない


不安にさせて 壊したのは 私なの?