交差点 #3

偶然に偶然が重なってだった その道を通ったのは


昨日までは バスで出掛けようと思っていたんだけど
時間の余裕があったから
一つ先のちょっと遠いバス停まで 歩いていこうと思っただけだった


バス停までの道に その少女は立っていた
何かを決心しているように見せかける 少し無理したような瞳だった


その瞳と ふと目が合った。
少し何かに迷ったように 首を傾げて聞かれている気が したんだけれど
そのまま私は 何も分からず
そのまま首を傾げ返してしまった


その直後 少女は 悲しそうな視線を私に投げて
何かを強く握り締めて
それで
自分の胸の前で 何か鈍い物音を立てた


日光に照らされて その何かが刃物だと気付くのは 少し遅かった


気が付くと私は その少女の元に駆け寄って
胸に突き刺さった刃物を抜き取り
抱きしめて 謝り続けた


ああ
今日は仕事に行けないだろう もうバスには間に合わない


私の周りに立つ人は
立ち尽くす人としゃがみ込む人と逃げる人がいた
傍にいたのは救急車を呼んだらしかった学生と
その近くに立ち尽くした社会人らしい男性だった


私と何か似たようなものを感じた
そんな事思っている場合じゃなかったけど


そんな事を思いながらも
私の腕の中の少女は荒い呼吸を繰り返していた